離職率は低いといわれているものの、働き始めてすぐ「辞めたい…」と悩む新人看護師さん、意外と多いのではないでしょうか。とはいえ転職に踏み切るのは勇気が要りますし、そうこうしている内に機会を逃す可能性も…?そこで今回は同じ悩みをもつ人の声も参考に、新人・新卒看護師でも辞められるのかを解説したいと思います。

新人でも1度は転職を考える!?
「離職率が低い」というだけで何となく辞めにくさを感じてしまうものですが、新人看護師の離職率とその実情をご存知の方は少ないのではないでしょうか。まずはここで、日本看護協会のデータをもとに新人看護師の離職について詳しく検証していきましょう。
新卒でも辞めたいと思う人は一定数
日本看護協会が発表した2019年度の調査によると、新卒看護職員の離職率は過去5年間7.8%。常勤看護師と比べてみても、比較的離職率は低くなっていることが分かります。

引用元:https://www.nurse.or.jp/up_pdf/20170404155837_f.pdf
しかし看護師は誰でもすぐなれるわけではなく、専門の学校で学んだ後、国家試験をパスしなくてはならない職業です。数字で見ると離職率は確かに低いですが、看護師は長年頑張って叶える職種にも関わらず、新人でも一定数「辞めたい」と思う人がいるということですね。
小規模病院ほど離職率は高い
同じく日本看護協会が発表した2016年度の調査結果によると、99床以下の小規模な病院ほど新人の離職率は高くなっています。
2015年度(2016年調査) | |
99床以下 | 13.9% |
100~199床 | 10.1% |
200~299床 | 8.4% |
300~399床 | 8.0% |
400~499床 | 7.8% |
500床以上 | 7.0% |
個人経営のような小さな病院は、どうしても医療体制や給与面に不満を覚えてしまいがち。とはいえ大規模病院は倍率が高く就職しにくく、仕方なく小さな病院に行った結果「すぐ辞めたい!」と思ってしまう人が多いということでしょう。
新卒が「辞めたい」と思う瞬間って?
新人看護師も少なからず「辞めたい」と思うようですが、その決め手は一体何か、そこも気になるところですよね。それでは続けて日本看護協会の2004年の調査結果から、新人看護職員の離職理由トップ5を見ていくことにしましょう。
理由1「求められる能力が高すぎる」
十分な臨床経験がないまま就職してしまうと、できないことを急に任されることも多いようです。臨床経験の有無は学校によって異なるので仕方ないのすが…あまりにそのギャップが大きいと、例え新人でもすぐ辞めたくなるのも頷けます。
理由2「精神的にキツイ」
看護師なら1度は耳にするかと思いますが、やはり精神的な辛さから辞める人は多いです。患者さんからの心無い言葉・業務の忙しさ・人間関係など、看護師にはメンタルに悪いことがたくさん。分かってはいても、実際体験すると心が折れてしまったという新人さんは多いことでしょう。
理由3「きちんと教育してもらえない」
新人には「プリセプター」という教育係がつくことが多いですが、それでも看護業界の教育の質は良いとはいえません。教育者が高圧的で質問できない・できないと小言を言われるなど、教育フェーズで辞めたくなる新人もかなり多いんですよ。
理由4「褒める文化がない」
教育の質にも関わることですが、看護業界に「褒める文化」が無いことも問題の1つ。せっかくスキルを覚えたり難しい仕事をこなせても、労いの言葉が一切ない…看護業界は新人がやりがいを感じる場を少なくしてしまっているのです。
理由5「生活が不規則になる」
患者さんの容態は時間に関係なく変化しますから、看護師は夜勤・日勤とに分けてシフトをこなさなくてはいけません。しかし急に生活習慣を変えるのは難しいことですから、分かってはいても身体がついていけない新人さんも少なくはないのです。
就業期間別!看護師を辞めるメリットは?
新人の内に辞める看護師は一定数いるものの、「辞めて大丈夫かな…」と心配に思う方も多いはず。しかし新人だからこそのメリットもあるので、諦めるにはまだ早いかも知れませんよ。ここでは就業期間別に、新人で辞めるメリットを確認していきましょう。
看護師歴:半年の場合
半年前後で看護師を辞める場合、こんなメリットが挙げられます。
- 引継ぐ業務がなく退職時の処理がスムーズ。
- 少し時間をおけば、第二新卒として再スタートできる。
看護師になって間もない内は、任せられる仕事がほとんどなく引継ぎの必要がありません。退職前も特に忙しくなることはなく、むしろ時間を持て余す可能性があるでしょう。
また退職後も看護師として就職する場合、第二新卒として就職活動することができます。元の病院のやり方に染まっていない分教育しやすいと判断されることが多いので、ほぼ新卒採用と同じ雰囲気・条件で再出発できるはずですよ。
看護師歴:1年目の場合
1年目で辞めるメリットはこんな感じです。
- 引継ぐ業務が比較的少ない。
- 第二新卒としてすぐに再スタートできる。
後輩ができる1年目の看護師も、まだ大きな仕事を任されることがないので引継ぎは少なくて済みます。退職前にすべきことはあまりなく、多くの場合半年前後で辞めるのと同じくらい時間がとれるのではないでしょうか。
退職前の空き時間を上手に使えば、そのまま第二新卒としてスムーズに再就職することもできるはず。有給や休日を活用して、理想の職場探しをしておきましょう。
看護師歴:2年目の場合
看護師を2年目で辞めるなら、こんなメリットが挙げられます。
- ある程度職務の流れなどが分かり、転職時にアピールしやすい。
- 病棟以外でも転職後しやすいスキルがある程度ある。
まだまだ新人として扱われる2年目も、看護師としてある程度業務に携わるようになってきます。仕事の流れややるべき事が把握できる年数ですから、2年目の転職なら面接時にそれをアピールすることができるでしょう。
また医療スキルや事務作業も身についてくる頃ですから、2年目は病棟以外の再就職先にも挑戦しやすいです。例えばクリニックや各種施設など、幅広い分野で再出発できる可能性がありますよ。
新人看護師が辞めるデメリットは?
新人の内に辞めるメリットもありますが、もちろんその反対も然り。メリットとデメリットをきちんと見極める必要がありますね。無理して働くべきではありませんが、新人で辞めるデメリットをここでしっかり確認しておきましょう。
その1:再就職に不利な可能性
どの仕事でもそうですが、就職前に「3年は続けるべき」と耳にしたことはありませんか?看護業界でもそれは例外ではなく、病院によっては3年未満で辞めたことが不利に働く可能性もあるのです。
単純に技術職としてスキル不足と見なされるだけでなく、3年勤続できない=再就職後もすぐ辞めるという印象を抱かれることも。同じ看護師として再出発を目指す場合、できれば候補の職場の面接事情や考え方をリサーチしておくと安心でしょう。
その2:経験者として扱われるケース
看護師としてデビュー後も2年目までは新人と見なされることが多いですが、中途採用枠で転職すると「経験者」として扱われる可能性も高いです。経験者=即戦力として扱われるため、新しい職場で高いスキルを要求され困惑する、なんてこと考えられます。
自分のスキルと職場とのギャップを生まないために、面接ではできること・できないことをきちんと伝えるようにしてくださいね。
その3:奨学金返還を求められる
突然ですが、みなさんが今の職場に勤め始めたきっかけは何でしょうか?学生時代病院から奨学金を貰っていて、そのままその病院に勤めている方は注意が必要なんですよ。
病院に学費を負担してもらった場合、返済免除の代わりに一定期間その病院に勤めるよう定められていることが多いです。それと同時に「御礼奉公」と呼びれるこの期間中の転職は、ほとんどの場合奨学金の即時返還が条件となっています。
就職まで奨学金を利用していた方は、ぜひ1度奨学金の規約を確認してみてくださいね。
看護師が上手に退職する方法は?
新人だと色々気を遣ってしまいますし、円満に辞めるためにも退職の手順を知っておきたいところ。最後に看護師の退職の流れについて、そして万一「辞めさせない」と言われた場合の対処法もご紹介したいと思います。
6つのステップで円満退職
看護師を辞めるなら、この6ステップどおりに行動すればOKです。新人ならではの注意点含め、各ステップを詳しくチェックしておきましょう。
- 就業規則をチェック
- 退職の意思を伝える
- 退職日を調整
- 退職届を提出
- 引継ぎ業務
- 退職
就業規則をチェック
退職は「辞めます」と言ったその日にできるわけではないので、就業規則に則って意思を伝えるのがベストです。
一般的には退職する1ヵ月前ですが、中には2~3ヶ月前に申し出るよう定められていることも。円満退職するためにも、就業規則は早めに確認するようにしましょう。
退職の意思を伝える
就業規則を確認したら、それに則って直属の上司に退職の意思を伝えましょう。最初の内は上司=プリセプターと捉えてもOKなので、言いやすい先輩社員と覚えておくと分かりやすいですね。
なお伝える際は別途時間をとってもらい、静かに話せる状況を作るときちんと伝わるはずですよ。
退職日を調整
退職について承諾を得られたら、上司と相談しつつ具体的な退職日を決定します。とはいえ新人看護師は引継ぎが少ないはずなので、希望日がそのまま通る可能性が高いでしょう。
退職届を提出
もし退職届が必要なら、退職が決定次第用意しておきましょう。就業規則や社内ルールに則って、提出先に早めに渡しておくと安心ですよ。
引継ぎ業務
担当していた仕事に引継ぎが必要なら、早めに資料などを準備し、退職日までに引継ぎを完了しておきましょう。
退職
退職当日はお世話になった先輩や上司だけでなく、担当していた患者さんにもごあいさつを。忙しい時間帯を避け、もし当日会えない人がいれば事前にあいさつを済ませておくとスマートですよ。
辞められないなら退職代行がベスト!
退職の意向を伝えた際、もし辞めさせてもらえない・無視されてしまったということがあれば、退職代行サービスを利用するのも1つの手です。
意向の提示や面倒な手続きも、退職代行サービスなら一気に解決。場合によっては依頼後出勤することなく辞められるので、退職の交渉が難航した場合にもおすすめの方法ですよ。
以下の記事では退職代行マイスターおすすめの退職代行サービスを紹介しています。万一の時は、ぜひ併せてチェックしてみてください。
新人でも辞められる!無理せず再スタートを目指しましょう!
新人の離職率は確かに少ないものの、あなたと同じように悩む看護師はたくさんいるとお分かりいただけたことでしょう。新人だからこその辞めるメリットもありますし、退職を禁止する決まりもありません。「看護師になったばかりだから…」と諦めず、ぜひあなたに本当に合ったお仕事で輝けるようにしてくださいね。