「辞めたいけど年度途中だから辞められない」「年度途中に辞めたら訴えられるのでは」と不安に思っているのではないでしょうか。
しかし実際には、保育士でも年度途中に退職できます。人手不足で上司に「辞めさせない」と言われても、確実に辞められるので安心してください。
当記事では、保育士が年度途中に辞める流れや注意点を紹介します。保育士が退職代行を使う方法についても解説するので、最後まで読んで参考にしてみてください!

保育士でも年度途中に退職できる
保育士が年度途中に退職することは、法律的に何も問題がありません。辞めたいと思ったら、事前に告知をすれば確実に退職できます。
人手不足や園児への影響など心配なことも多々ありますが、辞めたいときは自分の気持ちを優先していいのです。ここでは、保育士が年度途中でも確実に退職できる理由を解説します。
退職の自由が法律で認められている
保育士や幼稚園教諭で担任クラスを受け持っていても、年度途中に退職することは可能です。正社員は雇用期間が定められていない労働者なので、いつでも自由に退職できることが法律で認められています。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
引用:民法|e-Gov
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
園長や上司が「辞めさせない」と退職を拒否しても、2週間以上前に退職告知した上で辞めれば法律上は問題ありません。職場の就業規則で退職の予告期間を「1ヶ月前まで」「3ヶ月前まで」などと定められているときは、就業規則に従うのが一般的です。
雇用期間に定めがある保育士の退職について
雇用期間に定めのある雇用契約の場合、基本的に契約期間が尊重されます。契約期間が満了した時や、更新時に退職するのが一般的です。ただし、やむを得ない事由がある場合は直ちに契約を解除できます。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
引用:民法|e-Gov
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
やむを得ない事由とは「健康上の理由」「各種ハラスメント」「賃金の未払い」等です。やむを得ない事由について細かい規定はありませんが、当事者がやむを得ないと感じる場合は辞められる可能性が高いといえます。
また、アルバイトやパートとして1年以上働いている場合は、労働基準法(第137条)に基づき雇用期間の定めがあっても自由に退職可能です。2週間以上前に退職を申し出ることが望ましいですが、翌日に退職しても法律上は問題ありません。
早めに伝えれば問題ない
「人手不足で申し訳ない」「仕事が回らなくなる」などの心配があって、なかなか辞める決意ができない人もいるのではないでしょうか。しかし、本当に人手不足だとしても早めに申し出れば問題ありません。
きちんと引き継ぎを行えば、他の保育スタッフでカバーしあえるはずです。本当に人手不足なのであれば、年度途中でも採用募集をしている保育園はたくさんあります。
- 保育士の中途採用募集
- アルバイトやパート保育士を雇う
- シニア保育士を雇う
- フリーランス保育士を探す
- 保育ボランティアを募集する
定年退職したシニア保育士の復職や学生ボランティア、潜在保育士のアルバイト需要なども増えています。人手不足や職場のことが心配なら、後任採用の期間も考慮して3ヶ月以上前に退職を告知しましょう。
自分を守ることを優先しよう
人間関係や激務で疲弊している保育士は、我慢して仕事を続けても心や身体の調子が悪くなってしまいます。集中力が薄れた状態で仕事をしていれば、重大な保育ミスにもつながりかねません。
同僚や園児のことを考える事も大切ですが、まずは自分を守ることを優先させましょう。一旦保育と離れてみて、また保育の仕事がしたいと思った時は復職すればいいのです。
保育士が年度途中に退職する流れ
保育士が年度途中に退職する具体的な流れを紹介します。「いつ言うの?」「どうやって辞めるの?」と悩んでいる人は参考にしてみてください。
退職の意思を伝える
職場で個人面談の機会が設けられている場合は、面談のタイミングで退職の相談をするのがベストです。直近で面談がない場合は、事前に「面談をお願いしたい」「相談したい」と伝えて面談する機会を作りましょう。
- 直属の上司に面談の申し入れをする(メール可)
- 面談日に退職の意思を直接伝える
- 退職理由を話す
面談のアポ取りはメールやLINEでもいいですが、退職の意思は直接伝えることが望ましいです。引き止められたときは、毅然とした態度で「退職の意思は固い」と伝えてください。
保育士におすすめの退職理由
退職理由は、できるだけ当たり障りのない事情を伝えましょう。ネガティブな理由を正直に伝えるよりも、前向きな理由の方が辞めやすくなります。
- 結婚に伴い引っ越すことになった
- 妊活や育児に専念したい
- 家族の介護が必要になった
- 健康上の理由
- ドクターストップがかかった
- どうしても挑戦したい仕事がある
嘘は言わない方がいいですが、ネガティブな理由を伝えるよりはマシです。どうしても退職理由が見つからない場合は「健康上の理由」か「どうしても挑戦したい仕事がある」と伝えるといいでしょう。
退職届を提出する
直属の上司に退職の相談をし、正式な退職日が決まってから退職届を提出しましょう。職場によっては専用の退職書類などが用意されている場合もあるので、上司の指示に従ってください。
- 白無地の便せん(A4またはA5)
- 黒の万年筆またはボールペン
- 白無地の二重封筒(長形3号)
退職届
このたび、一身上の都合により
20xx年〇月〇日をもって退職いたします。
20xx年〇月〇日(記入日)
自分の名前 ㊞
社会福祉法人〇〇保育園(正式名称)
園長 〇〇 〇〇 様
退職届は「手書き・縦書き」が一般的ですが、就業規則に決まりがなければ「印刷(PC等)・横書き」でも構いません。消せるボールペンは使わないようにしてください。
封筒の表には「退職届」、裏には「自分の名前」と記入します。退職届を作成したら3つ折りにし、封筒に入れて提出しましょう。
保育スタッフへの挨拶
退職することが正式に決まったら、他の保育スタッフへ退職することを伝えましょう。朝礼や終礼などのタイミングを使って全体に伝えさせてもらうのがベストです。
- 退職日程
- 簡単な退職理由
- 今までお世話になったことの感謝
- 年度途中の退職になることのお詫び
「この度、健康上の理由で退職することになりました」等、退職理由は完結に話してください。そのあとに保育士として未熟な自分を育ててもらったことの感謝や、年度途中の退職になって迷惑をかけることのお詫びを一言添えましょう。
全体集会がない場合は、できるだけ1人1人に直接挨拶をしてください。忙しくて直接挨拶するのがどうしても難しい場合はメールやLINEで退職の挨拶を済ませることも可能です。
引き継ぎを行う
退職の挨拶が済んだら、退職日まで後任の保育士へ業務の引き継ぎを行います。年度途中の引き継ぎは忙しい中で行うことになるため、引き継ぎノートなどを作っておくと便利です。
- 園児のアレルギーや疾患
- 園児の性格や家庭環境
- 保護者の特徴
- 保育状況
- 行事の状況
- 物の置き場所
- 各種資料の説明
- その他必要だと思うこと
物や書類は整理しておき、備品の置き場所はきちんと決めておきましょう。年度途中の退職でも、引継ぎをしっかりすれば後任保育士への負担が少なくなるはずです。
園児や保護者への挨拶
退職日が近づいてきたら、園児や保護者に挨拶をしましょう。まずは担当クラスの園児を集め、分かりやすい言葉で辞めることを伝えてください。
- バイバイします/さよならします
- 遠くへ行くので会えなくなります
- 会えなくなるけど元気でいてください
- 園で会えなくなるけどいつも応援してます
- 今までありがとう
保護者への挨拶方法は「懇談会で伝える」「園だよりに書く」「連絡に書く」など様々です。基本的には職場の方針に従えばいいですが、特に決まりがない場合は自分がやりやすい方法で挨拶すればOKです。
子どものお世話をさせてもらったことのお礼や行事協力の感謝を丁寧に伝えましょう。保育園や他の保育スタッフへのネガティブな感情だけは絶対に言わないようにしてください。
退職完了
退職当日はスタッフの人数分のお菓子を持参し、感謝の気持ちを伝えましょう。手紙や1人1人へのプレゼントなど、園の慣習があれば従うのがベストです。
全体挨拶をさせてもらえる場があれば、できるだけ丁寧な言葉で完結に挨拶をします。全体挨拶ができない場合は、直属の上司や身近な同僚だけでも直接挨拶してください。
デスク周りやロッカーなどを確認し、返却物や忘れ物がないか再度確認しましょう。最後に身の回りをキレイに掃除したら、無事に退職完了です。
年度途中に辞めるときの問題点
保育士が年度途中に辞めることは可能ですが、問題点もあります。ここからは、問題点と解決方法について見ていきましょう。
引き止めを受ける
年度途中に退職すると伝えれば、ほぼ確実に引き止め交渉を受けることになります。お世話になった上司から引き止められたら拒否するのは難しいものです。
「不満があれば改善する」「待遇を良くする」と言ってくる場合もあります。給料が少しでも上がったり、業務量が減ったりしたら退職する気持ちが揺らぐでしょう。
しかし引き止め交渉に応じてズルズルと仕事を続けていても、現状は何も変わりません。毅然とした態度で「退職する意思は固い」と示し、迷いを見せないことが大切です。引き止め交渉には冷静に対応し、きちんと断ってください。
- 引き止められることを想定し、返答を準備しておこう
- 毅然とした態度で冷静に対応しよう
引き継ぎをする余裕がない
保育士の仕事は通常業務だけでも忙しく、残業や持ち帰り作業が多い状況です。そのため、年度途中で退職することになると、ゆっくり引き継ぎをする余裕がありません。
退職前はやることが増えますし、時間外の引継ぎでは後任の先生にも負担がかかります。引き継ぎが不十分なまま退職すると、園児や保護者にも迷惑がかかってしまうでしょう。
責任感が強い人ほど年度途中の退職は心苦しくなってしまいます。退職までは、プライベート返上で引継ぎ資料を作ることになるかもしれません。
- 引き継ぎノートを作って引継ぎ時間を短縮しよう
- 退職が決まる前から備品を少しずつ整理しておこう
挨拶するときに気まずい
保育士が辞めることになると、一般の会社員より多くの人に挨拶をしなければなりません。挨拶をするたびに、気まずい思いをしなければならないのは避けられないでしょう。
挨拶の気まずさは、割り切ってやり過ごす以外に方法はありません。退職後は仕事のストレスから一気に解放されます。1つ1つの挨拶は手短に行い、心を無にしてやり過ごしましょう。
「手短かつ丁寧な挨拶」を複数パターン準備しておこう
今すぐ辞めたいときは退職代行がおすすめ
「今すぐ辞めたい」「どうしても辞めさせてくれない」という人は、退職代行を使うのがおすすめです。退職代行を使えば直接職場とやり取りの必要がなく、ストレスなしで辞められます。
- 上司からパワハラを受けている
- 職場いじめを受けている
- 退職の相談に応じてくれない
- 絶対に辞めさせないと言われた
- 精神的に限界
- 明日から行きたくない
- 自宅や実家から職場が遠い
- 職場の人と関わりたくない
- 二度と保育士には復職しない
退職代行の費用相場は3万円前後で、辞めるためにお金がかかります。しかし職場と一切関わることなく、確実に辞められることがメリットです。
事前に引継ぎ資料を用意しておけば、翌日から職場に行かないことも可能になります。必要書類や備品返却等のやり取りは郵送でいいので、退職代行に頼めば二度と職場に行くことはありません。
- 「気まずい」「申し訳ない」という気持ちで辞めにくい人は、退職代行を使わない方がいい
- 職場と実家が近い人は、退職代行を使うと人間関係がこじれる可能性があるので注意しよう

年度途中に辞めたい保育士まとめ
担任クラスを持っている保育士でも、年度途中の退職は可能です。法律で退職の自由が認められているので、上司が「辞めさせない」と言っても強い意志をもって行動すれば確実に退職できます。
保育士が年度途中に退職する場合、引き継ぎと挨拶が重要です。細やかな引き継ぎ資料の作成や丁寧なあいさつを行い、できるだけ誠意を尽くして退職しましょう。
どうしても辞められない場合は、保育士でも退職代行の利用が可能です。パワハラやいじめ、在職強要などで困っている人は退職代行を使って今すぐに辞めてしまいましょう。
