車好きにとって自動車整備士は、まさに天職です。しかし実際に働いてみると給与面、残業の多さなど想像していたよりもずっと過酷で「これなら趣味で車が弄りたい・・・」と退職まで考えている人は少なくないと思います。
この記事では、同じように悩む整備士の方の実際の声を参考に、辞める際の注意点や退職までの流れなどを解説していきます。

自動車整備士の3つの主な退職理由

自動車整備士が辞めたいと思う理由で特に多いのが3つあります。それが「給料」と「残業の多さ」、「業界に対する将来の不安」です。どの職業にも言えることかもしれませんが、整備士は特に顕著で業界でも問題視されているほどです。
- 給料が少ない・上がらない
- 残業が多い
- 将来的な不安を感じた
給料が少ない・上がらない
専門職と言えば聞こえは良いのですが、実際のところ8年働いても手取りが13万円と1年目とほとんど変わることはありません。
マイスター編集部にも元自動車整備士の方がいるのですが、入社10年の先輩が毎月お金無いというのを聞いて絶望していたようです。その彼も手取りで14万ほどだったので、何年働いても給料が上がらないというのは本当のようです。
残業が多い
残業が非常に多いのも、自動車整備士の問題点でもあります。月に60時間以上、100時間に上ることもあります。場合によっては労基の規定にそって45時間までしか残業代が付けられず、それ以降はサービス残業とみなして働かせているところも存在します。
とはいえ、近年の働き方改革に伴い、徐々に改善はされているので、この点は時間が解決してくれる問題になります。
将来的な不安を感じた
整備業界に対して、将来性を感じずに辞めてしまう整備士も多いです。ひと昔前までは車検で20~30万と料金がかかっていたのも、近年は10万前後まで落ち込み、単体だけで見ると収益は落ちているのがわかります。
それに比例して整備士の人数も少なくなり、残った整備士に仕事のしわ寄せがくるというのが現状です。
新人・ベテランそれぞれの退職後の道は?
自動車整備士を辞めたいとは思いつつ、他にどんな道があるか分からない…そんなモヤモヤを抱える人も多いのではないでしょうか。ここでは自動車整備士を辞めた後どんな仕事に就くべきか、新人・ベテランそれぞれの転職先一例を紹介したいと思います。
【新人】異業種へのチャレンジを!
自動車整備士になって間もない新人の内は、知識・技術・経験ともにこれからといった状態です。しかしその分柔軟性が高く色々な仕事に対応できるため、自動車整備士のみならず異業種に転職するハードルも低いといえるでしょう。また再出発を早めにすると、新しい職場で昇給のチャンスが多くあるのもポイントですね。
- カー用品ショップ
- トラックやタクシーのドライバー
- 自動車関連の営業職
- 期間工
- 機械系の設計や品質管理
- IT企業やWeb業界
【ベテラン】他の整備工場へ転職
長年自動車整備士として働いていた方は、その経験を活かせる仕事が転職に最適です。会社から独立する道はもちろん、今までの知識や技術は自動車整備士以外の仕事にも役立てられます。さらにベテランは営業やサービスフロントを少なからず経験しているはずですし、お客さんに難しい説明が必要な仕事も難なくこなせるのではないでしょうか。
- 独立
- 整備工場作業員
- アジャスター
- 中古車査定士
- 工業高校などの講師
最適な転職先やその探し方は?
転職したい!という気持ちは強くても、具体的にどんな選択肢があるか分からない…中にはそんな方もいるのではないでしょうか。今までのスキルや経験を活かせる仕事はあるか、ここでは自動車整備士にぴったりの転職先をチェックしていくことにしましょう。
ケース1:ディーラーor民間整備工場へ
今の職場は嫌だけど、自動車整備士は続けたい…そんな方は環境を変えてみるのも良いのではないでしょうか。例えばあなたがディーラー勤めなら民間へ、反対ならディーラーへといった具合ですね。ディーラーと民間整備工場は真逆といっても過言ではありませんし、新しい環境なら今より楽しく仕事できるかも知れませんよ。
次は失敗しないように、こちらの職場選びの基準を参考に転職先を考えてくださいね。
- お給料・賞与・ボーナスは今より好条件か
- ギリギリの人員で回していないかどうか
- 残業について言及しているかどうか
- 教育制度は充実しているか
- キャリアアップが見込めるか
ケース2:独立する
自動車整備士として経験やスキルが十分なら、転職先を探すのではなく独立するという手もアリです。自分がルールの会社を作れるため周りに煩わされることがなく、また雇用されない分収入がUPする可能性もありますね。
初期費用や準備など最初の内は大変ですが、やっていける自信がある方は起業にチャレンジする価値があるといえるでしょう。
ケース3:車関連の仕事に就く
自動車整備士を辞めても車には関わっていたい…そう思うならやはり車関連の仕事を探すのがおすすめです。車に触れたり関われる仕事は他にもたくさんあり、中には自動車整備士としてのスキルや知識を活かせる職種もありますよ。以下に一例を挙げますので、こちらを参考に自分にあった転職先を探してみてください。
- カー用品ショップ
- トラックやタクシーのドライバー
- 整備工場作業員
- アジャスター
- 中古車査定士
- 工業高校などの講師
ケース4:異業種に転職
無理に車と関わる仕事を探さずとも、思い切って異業種に転職という道もありますよ。車に詳しく機械にも強い、そんな自動車整備士の強みが活きる異業種は色々あります。どちらかといえば新人~中堅向けの選択肢ではありますが、やる気次第でベテランさんでも活躍できることでしょう。
大切なことは気持ちですから、やりたいことがあれば我慢せずチャレンジしてみてくださいね。
- 自動車保険などの営業職
- 期間工
- 機械系の設計や品質管理
- IT企業やWeb業界
自動車整備士が退職する手順
退職に慣れっこの方は少ないはずですし、自動車整備士を辞めるにはどうすべきかも把握しておきたいところ。ここでは穏便退職するために、「辞めたいです!」と伝えるまでの流れを確認していきましょう。
ステップ1:就業規則をチェック
立つ鳥跡を濁さずとも言いますし、辞めるならやはり円満退職を目指したいところ。そこで重要なのが就業規則で、辞めたいと思ったら真っ先に申し出期間についてチェックするようにしてください。
就業規則の退職に関する項目に「〇ヵ月前に申し出ること」と記載があると思います。この申し出期間に合わせて退職の意向を伝えること、それが円満退職への第一歩なんですよ。
ステップ2:退職の意向を伝える
就業規則をチェックしたら、後はそれに沿って退職意向を会社側に伝えればOKです。伝える相手は直属の上司で問題ありませんが、少人数の民間整備工場なら店長・工場長に直接話すのも良いでしょう。またこの時しっかり話を聞いてもらうために、上司と2人で静かに話せる環境・時間を作ってもらうのがベストです。
自動車整備士を辞める時に注意することは?
嫌な仕事を無理に続ける必要はないものの、自動車整備士には退職する際いくつか注意すべきことが。自動車整備士を辞める時に気をつけることとは何か、それを最後に紹介したいと思います。
その1:仕事によって資格を活かせない
自動車整備士になるには3級~1級の資格をとる必要がありますが、転職先によってはそれが活かせないことに留意しておきましょう。例えばIT業界やショップ店員に整備士資格の有無は問われませんから、取得の過程でかかる勉強時間・学費・受験料などを天秤にかけて転職先を考えてみてください。
その2:退職金がない可能性も
これはどの会社でもいえることですが、会社を辞める=退職金がもらえるわけではないのでご注意を。特に自動車整備士に多い誤算が確定拠出年金制(※)だったというケースで、油断していると後々お金に困る可能性もあります。退職金に頼らずに、日々貯金を心がけておくと良いですね。
※確定拠出年金:公的年金の上乗せが目的の年金。退職金代わりとして利用されることが多いが、一定の年齢まで働かないと支払対象にならないことがある。
その3:人手不足で辞めにくい
昨今自動車整備士の数は減少の一途を辿っていて、業界全体で人手不足が深刻な問題となっています(※)。そのため辞めにくさを感じるだけでなく、意向を伝えた際引き留められる可能性大。辞める意思を固めたら、引き留められることも考慮して早めに準備をしておきましょう。
もし言いにくい・強引に引き留められるということがあれば、退職代行サービスもあることを覚えておくと安心ですよ。
※参照:PR TIMES『【2020年】自動車整備士不足が深刻な課題に。原因の考察と弊社の取り組み』
以下の記事では退職代行マイスターおすすめの退職代行サービスを紹介しています。言い出しにくい・引き留めにあい困っているという方は、ぜひ併せてチェックしてみてください。
自動車整備士を辞めるなら早い内が正解!
車好きなら1度は憧れる自動車整備士でも、お給料や労働環境など車以外の部分で仕事に悩む人はたくさんいます。辞め時を逃すと転職の幅も狭まりますし、自動車整備士を辞めるならは辞めの決断が吉といえるでしょう。ご紹介した注意点も参考に、お辞めになる際は上手に一歩踏み出せるようにしてくださいね。